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精密根管治療で上顎洞粘膜の腫れと骨吸収が治った症例

―原因不明の違和感が改善し、自然な骨再生が見られたケース―

精密根管治療で上顎洞粘膜の腫れと骨吸収が治った症例

①「なんとなく重い」「違和感が続く」…それは歯が原因かもしれません

ある日突然、鼻の奥が重く感じたり、頬の奥に鈍い痛みを感じたことはありませんか?
風邪でもないのに鼻の奥がつまるような感覚があり、「副鼻腔炎かな?」と思って耳鼻科へ行ったけれど、原因がはっきりしない。
そんな症状の中に、実は歯が原因となっているケースが少なくありません。

上の奥歯の根の先は、鼻の奥にある「上顎洞(じょうがくどう)」という空洞に非常に近い位置にあります。
そのため、根の先に炎症や感染があると、炎症が上顎洞の粘膜に波及して**上顎洞粘膜の肥厚(腫れ)**を引き起こすことがあります。
これは耳鼻科領域では「歯性上顎洞炎」と呼ばれる状態で、歯科での根管治療が必要になるケースです。

今回ご紹介するのは、まさにそのような症例。
過去に神経を取った奥歯の根の先に感染が再発し、上顎洞の粘膜が厚く腫れていた患者さんが、**精密根管治療(マイクロスコープ下治療)**によって、骨も粘膜も自然に回復していった実例です。


②患者さんの訴えと初診時の状態

患者さんは50代の女性。
「右上の奥歯がときどきうずくように痛む」「鼻の奥が重く、スッキリしない感じがある」との主訴でご来院されました。

歯ぐきの腫れや強い痛みはなく、冷たいものもしみません。
しかし、咬んだ時にわずかな違和感があり、鼻の奥の圧迫感を気にされていました。
レントゲン写真では、右上の奥歯の根の先に**黒い影(透過像)**が確認されました。
これは骨が溶けてしまっているサインで、歯の内部から感染が広がっている可能性があります。


③CTによる精密診断

当院では、レントゲンだけでは見えない部分を確認するため、歯科用CTによる立体的な診断を行っています。
この方のCTを撮影したところ、根の先に明らかな炎症があり、その周囲の骨が吸収(溶解)していました。
さらに、上顎洞の粘膜が3〜4mm以上に肥厚しており、炎症が上顎洞内に及んでいる状態でした。

耳鼻科的な副鼻腔炎と違い、原因が歯の根の中にある場合は、抗生物質や点鼻薬では根本的な治癒は望めません。
感染源を取り除くには、**根管治療のやり直し(再根管治療)**が必要になります。


④治療方針のご説明

患者さんには、

  • 歯の神経の通り道(根管)に感染が再発していること
  • その感染が骨と上顎洞に波及していること
  • 精密根管治療で感染源を完全に除去できれば、骨や粘膜は自然に回復する可能性が高いこと
    を丁寧にご説明しました。

保険の再根管治療では、使用できる器具・時間に制限があり、再発リスクが高いこともお伝えしました。
患者さんは「もう抜歯になるのでは」と不安に感じていましたが、歯を残すために自由診療でのマイクロスコープ根管治療を選択されました。


⑤精密根管治療の流れ

ステップ1:ラバーダム防湿と無菌的な環境づくり

治療中に唾液や細菌が根管内に入らないように、ラバーダム防湿というゴムシートを装着します。
これは根管治療の成功率を大きく左右する重要なステップです。

ステップ2:古い詰め物と感染物質の除去

マイクロスコープで拡大しながら、過去の根管充填材を丁寧に除去。
同時に、根の内部に残っていた感染源(細菌や古い薬剤)を専用器具で洗浄していきます。

ステップ3:根管の拡大・洗浄

根管は髪の毛よりも細く、複雑に曲がっていることがあります。
ニッケルチタン製の柔軟な器具を使って、感染している部分を完全に除去。
その後、EDTAや次亜塩素酸ナトリウムによる超音波洗浄で細菌を死滅させます。

ステップ4:根管充填

内部が完全に乾燥・無菌化できた段階で、バイオセラミック系の封鎖材を使用して根の中を密封します。
このとき、空気や細菌が再び侵入するすき間を一切残さないよう、マイクロ単位の精度で充填しました。

ステップ5:最終修復

根の治療が完了したのち、上部をセラミックで補強しました。
咬み合わせを微調整し、歯全体の力のバランスを整えました。


⑥治療後の経過

治療後、数日で痛みや違和感は軽減。
1か月後には「鼻の奥の重だるさがなくなった」とおっしゃいました。

3か月後のCTでは、根の先の黒い影が小さくなり、炎症範囲が縮小していました。
さらに6か月後には、骨の欠損部分に新しい骨が再生している像が確認でき、上顎洞粘膜も正常な厚み(1mm以下)に回復していました。


⑦なぜ骨や粘膜が自然に治ったのか

歯の根の先に細菌感染があると、体はその細菌を排除しようとして炎症を起こします。
このとき、炎症性物質によって骨が一時的に溶けたり、粘膜が腫れたりします。
しかし、感染源が除去されると、体は自然に修復機能を働かせ、骨の再生や粘膜の回復が起こるのです。

つまり、今回の改善は「薬で治した」わけではなく、「原因を取り除いた結果、体が自ら治った」治癒です。


⑧精密根管治療と保険治療の違い

保険治療では時間や材料に制限があるため、再発率が高くなる傾向があります。
一方、自由診療の精密根管治療では、

  • マイクロスコープでの拡大視野
  • CTによる立体的診断
  • 無菌環境での処置
  • 高性能な薬剤・器具の使用
  • 医師が1本の歯に長時間をかける丁寧なアプローチ
    といった違いがあります。

今回のように「見えない部分の感染を正確に取り除く」には、肉眼では不可能な繊細な作業が必要です。
その積み重ねが、再発を防ぎ、自分の歯を長く残すことにつながります。


⑨患者さんの感想

治療終了後、患者さんは次のようにお話しされました。

「鼻の奥が軽くなり、歯の違和感もまったくなくなりました。
長年スッキリしなかった理由が、歯にあったなんて驚きです。
抜歯にならずに済んで本当によかったです。」

歯の中の細菌感染が、これほど全身に影響を与えるという事実を実感されたようです。


⑩まとめ ― 歯と上顎洞はつながっている

今回の症例が教えてくれることは、「歯の感染が上顎洞や全身に影響を与える」ということ。
そして、「正確な診断と精密治療によって、自然治癒力が最大限に引き出される」ということです。

上の奥歯の痛みや違和感、鼻や頬の重だるさを感じる方は、歯を疑ってみてください。
耳鼻科に行っても原因がわからない慢性的な症状の中に、歯の根の感染が隠れていることは珍しくありません。


⑪Q&A(よくある質問)

Q1. 上顎洞の腫れは必ず治りますか?
→ 原因が歯の感染であれば、精密根管治療で感染を取り除くことで自然に回復することが多いです。

Q2. 保険の根管治療とどう違うのですか?
→ 使用できる器具・材料・時間に大きな違いがあります。自由診療では、顕微鏡やCTを駆使して再感染リスクを最小限に抑えます。

Q3. 骨が再生するのは本当ですか?
→ 感染源が除去されると、身体の治癒力により骨はゆっくり再生します。CTで確認可能です。

Q4. 痛みはありますか?
→ 麻酔を十分に行うため、治療中の痛みはほとんどありません。術後も軽い違和感程度で済む方が多いです。

Q5. どのくらい通院が必要ですか?
→ 通常2〜3回程度で完了しますが、感染の程度により個人差があります。


⑫自分の歯を残すために

精密根管治療は、単なる「神経の治療」ではありません。
それは、歯を抜かずに生涯使うための再生医療的なアプローチです。
一度失った神経は戻りませんが、骨も粘膜も体が再生してくれる。
その可能性を引き出すのが、正確で丁寧な治療です。

菊川駅前歯科では、1日あたりの患者数を限定し、1人ひとりの治療に時間をかけて向き合っています。
顕微鏡を使った精密根管治療で、あなたの歯を守るお手伝いをいたします。


【まとめ】

  • 上顎洞粘膜の肥厚や骨吸収は、歯の感染が原因で起こることがある。
  • 精密根管治療で感染源を完全に除去すれば、骨や粘膜は自然に治癒する。
  • 保険治療との違いは、時間・精度・視野の差にある。
  • 自分の歯を残す最後の手段が「精密根管治療」。

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