あなたの受けている歯科治療、マイクロブラシや筆は「使い捨て」ですか?〜見えない滅菌の真実〜
歯科医院を選ぶとき、皆さんはどのような基準で選んでいますか? 「先生が優しい」「家から近い」「設備が新しい」など、さまざまな理由があると思います。しかし、治療の安全性に直結する「滅菌・感染予防対策」について、深く確認したことはあるでしょうか。
今回は、普段患者さんの目にはなかなか触れない、しかし非常に重要な「細かな器具の衛生管理」と、私たちが1日の診療人数を制限している理由についてお話しします。
滅菌が難しい「マイクロブラシ」や「筆」
むし歯の治療などで詰め物をする際、歯と詰め物を接着させるための薬液(ボンディング材など)を塗布します。その時に使用するのが、非常に細い「マイクロブラシ」や「筆」です。
実は、これらの器具は構造上、非常に微細な繊維で作られているため、使用後に完璧に洗浄・滅菌することが極めて困難です。そのため、感染予防の観点から言えば、患者さんごとに新しいものを使用する「ディスポーザブル(使い捨て)」にすることが最も安全で確実な方法です。
しかし、あなたが今受けている治療では、これらは毎回使い捨てにされているでしょうか?
保険診療における「滅菌のジレンマ」
日本の保険診療制度は、安価で誰もが一定の治療を受けられる素晴らしい制度です。しかし、その一方で「低い診療報酬」という構造的な問題を抱えています。
歯科医院を経営していくためには、1日に何十人もの患者さんを短い時間で次々と診ていかなければならない現実があります。次から次へと患者さんがいらっしゃる中で、チェアーを片付け、すべての器具を完璧に滅菌し、細かな消耗品まですべてディスポーザブル(使い捨て)にするには、莫大な「コスト」と「時間」がかかります。
その結果、決して意図的ではなくとも、保険診療の忙しいサイクルの中では、どうしても滅菌や感染対策が「不十分になりがち」になってしまうというジレンマが存在するのです。
1日の診療人数が限られているからこそ、守れるクオリティ
私たちが1日に診させていただく患者さんの人数をあえて制限しているのは、まさにこの「見えない部分のクオリティ」を守るためです。
診療人数を限定し、患者さん一人ひとりに十分な時間を確保することで、以下のような徹底した衛生管理が可能になります。
- 完全ディスポーザブルの徹底 マイクロブラシや筆はもちろん、手袋、エプロン、紙コップなど、使い捨てできるものはすべて患者さんごとに新しいものを使用します。
- 妥協のない滅菌プロセス 使い捨てできない治療器具(タービンやドリルなど)は、世界最高基準の滅菌器を使用し、時間をかけて細胞レベルで細菌やウイルスを死滅させます。
- クリーンな診療環境の準備 前の患者さんの治療が終わった後、次の患者さんをお迎えするまでに、診療台(ユニット)周りの清掃と消毒にしっかりと時間をかけます。
「見えない安心」を提供するために
患者さんにとって、器具がきちんと滅菌されているか、筆が新しいものかどうかを治療中に確認するのは難しいかもしれません。だからこそ、医療従事者側の「良心」と「システム」が問われます。
人数を制限することは、医院の経営的な効率だけを見ればマイナスかもしれません。しかし、「自分自身や自分の家族に受けさせたい治療環境」を追求した結果、私たちはこのスタイルにたどり着きました。
治療の技術はもちろんですが、その土台にあるのは「徹底した衛生管理による安全」です。 これから歯科治療を受けられる方は、ぜひ「その医院がどれだけ感染対策に時間とコストをかけているか」という視点も、医院選びの参考にしてみてください。