【歯科コラム】「良い歯医者」を見分ける、たった一つのシンプルな基準

「丁寧な治療をしてくれる歯科医院を探したい」 多くの方がそう考え、最新の設備や口コミ、痛みの少なさなどを基準にクリニックを選ばれているかと思います。しかし、歯科医師の視点から言わせていただくと、治療の質や丁寧さを推し量る最も明確でシンプルな指標が一つあります。
それは、「1回の治療に、どれだけの時間を確保しているか」です。
「30分で丁寧な治療」は本当に可能か?
日本の歯科医療の現場では、「1回の治療時間は15分」ということも珍しくありません。そのため、「当院は保険診療でも1回30分確保し、丁寧に診ています」と謳うクリニックもあります。一般的には長く聞こえるかもしれません。
しかし、精密治療を追求する立場から非常に厳しいことを申し上げると、「30分」という枠組みは、もはや私たちが考える質の高い治療の基準には全く達していません。
30分という時間には、患者様を診療台へご案内し、今日の体調をお伺いし、麻酔を打ち、それが効くのを待つ時間も含まれます。さらに治療後のご説明やお見送りの時間を差し引けば、実際に歯を触れる「実質的な治療時間」はほんのわずかです。その短時間で、本当に一切の妥協のない治療ができるでしょうか。答えはノーです。
当院のスタンダードが「1回90分〜120分以上」である理由
当院では、お一人の患者様の1回の治療につき、標準で90分から120分、あるいはそれ以上の時間を確保しています。
なぜ、それほどまでに時間が必要なのか。それは、歯の寿命を本気で守るための「精密な工程」を省くことができないからです。
例えば、むし歯の再発を防ぐために「ラバーダム」というゴムのマスクを装着して無菌的な環境を整えること。 肉眼では見えないミクロの汚れを、歯科用マイクロスコープを使って徹底的に取り除く根管治療を行うこと。 あるいは、健康な歯を極力削らず、天然歯のような美しさと強度を再現するダイレクトボンディングを行うこと。 そして、将来のトラブルを防ぐために、噛み合わせのバランスをミリ単位で調整すること。
これら一つひとつの工程を、妥協せず、確実に行うためには、準備からご説明までを含めて「90分〜120分」がどうしても必要な最低限の時間なのです。
「時間」はシステムによって作られる
では、なぜ多くの医院がそれをしないのか。それは技術の問題だけではなく、医療制度の構造によるものです。
保険診療のシステムでは、1日に数十人の患者様を診なければクリニックを維持することができません。つまり、「90分〜120分以上」という圧倒的な時間を一人の患者様にお約束することは、完全な自由診療(自費診療)に特化し、1日の予約人数を極限まで絞り込んだ診療体制を組んでいなければ、物理的に不可能な設定なのです。
治療の質は、かける時間に直結します。 時間に追われることなく、目の前の歯1本1本と徹底的に向き合うこと。それが、当院が自由診療というスタイルを選び、この「時間」にこだわる最大の理由です。
「とりあえず早く終わらせてほしい」という方には、当院のスタイルは合わないかもしれません。しかし、ご自身の歯を一生の財産と考え、本質的で再発のない「本当に丁寧な治療」をお求めの方には、この時間をかける意味を必ず実感していただけるはずです。
クリニック選びに迷われた際は、ぜひこの「治療時間」という基準を思い出してみてください。